2023/09/12

36協定とは?ルール・手続きをわかりやすく解説

36協定ってなに

はじめに

日本の雇用制度は多くの規則と法律に基づいて構築されており、労働者と雇用主の権利と義務を保護し、健全な労働環境を確保することを目的としています。
その中で、36協定(さぶろくきょうてい)は、労働者と雇用主の間で合意される大変重要な要素の一つです。
36協定の正式名称は「時間外・休日労働に関する協定届」であり、36協定という呼び名は、労働基準法第36条で規定されていることに由来します。

この記事では、36協定とは何か、その重要性について詳しく説明します。

36協定とは?

36協定は、日本の労働基準法(労働基準法第36条)に基づいて設けられた制度で、「時間外・休日労働に関する労使協定」のことです。
企業が従業員に時間外労働や休日労働を命じる場合には、企業と労働者の間で協定を結び、所轄労働基準監督署長への届出をする必要があります。
36協定を違反してしまうと、企業側に刑事罰が下される可能性があります。

以前は締結を結べば労働時間に上限はなく、年間6ヶ月までは何時間でも無制限に残業させることが可能でした。
しかし、2019年4月に順次施行された「働き方改革関連法」により、特別条項付の36協定を締結していたとしても残業時間に上限規制が設けられるようになりました。

そんな36協定とはどんな内容なのでしょうか。
締結方法や届け出の提出の仕方、上限を超えないための対策など、36協定に関する情報を詳しく解説していきます。

36協定の用語解説

法定労働時間と所定労働時間

「所定労働時間」とは、企業ごとに就業規則で定められた労働時間のことを指します。9:00-17:00で休憩1時間の場合所定労働時間は7時間になります。
一方、「法定労働時間」とは、労働基準法で定められた労働時間のことで、原則として1日8時間、週に40時間という労働時間の上限のことを指します。
企業は原則、この法定労働時間の上限を超えない範囲で所定労働時間を設定する必要があります。

時間外労働(残業)・休日労働の上限時間

36協定を締結した場合でも、時間外労働(残業)や休日労働の上限時間はあります。
労働基準法における時間外労働(残業)の上限は、月45時間・年360時間と定められており、原則としてこれを超える労働をさせることは禁じられています。

しかし、繁忙期など、この上限を超えざるを得ない時もあるでしょう。
その場合、労使間で「特別条項付き36協定」を締結すれば、例外として以下の上限まで時間外労働が可能となります。
ただし、特別条項付き36協定の上限をさらに超えた場合は労働基準法違反となり、罰則が科される可能性があるので注意が必要です。

法定休日と法定外休日(所定休日)

法定休日は、国が定めた毎週与えられる1回の休日のことであり、労働基準法によって定められています。
一方、法定外休日は、法定休日以外に定められた休日であり、通常の労働時間外に与えられます。
例えば、週40時間労働した場合、労働のない残り2日が休日となります

協定届の種類

協定は大きく分けて2つの種類に分けられます。

一般条項

通常の36協定を締結する場合には、一般条項のみの届出となります。つまり、残業をさせる場合に絶対に必要となる届出のことです。
通常の36協定では、1週間あたり15時間、月に45時間、年に360時間までの時間外労働が可能です。

特別条項付き36協定

通常の36協定では対応できないケースについては、特別条項付きの36協定を締結します。
『特別条項付き36協定』とは、繁忙期や突発的に発生した業務対応など特別の理由がある場合に月45時間、年360時間の上限を超えて従業員を労働させることができる協定です。

2019年法改正

2019年の法改正以前はこの特別条項に残業時間の上限規制が無かったため、実質は何時間でも働かせることができるという法の抜け道になっていました。
これが長時間労働の温床となっていたため、2019年の法改正では特別条項にも残業時間に上限が設けられました。
下記がその規制内容となります。

・月100時間未満、年720時間以内
・45時間を超えて残業させても良いのは1年につき6か月まで
・複数月2~6ヶ月のどの期間をとっても残業時間の平均が80時間以内におさめる

36協定の締結方法

36協定は、労働者の過半数で組織する労働組合、または労働者の過半数を代表する者と企業の間で、書面を用いて締結する必要があります。
36協定の締結が可能な労働組合と労働者の代表にはそれぞれ条件が設定されており、それら条件を満たす組織や代表でなければ、たとえ36協定を締結したとしても無効とされます。

労働組合(過半数組合)の条件

労働組合の場合、「事業場に使用されているすべての労働者の過半数で組織する組合であること」が条件です。
「すべての労働者」とは、正社員のみならず、契約社員・派遣社員・パート・アルバイトなども対象です。

労働者の代表(過半数代表者)の条件

企業に労働組合が存在しない場合は、労働者の代表と36協定を締結します。代表者の条件は以下の通りです。
・労働者の過半数を代表していること
・36協定を締結するための過半数代表者を選出することを明らかにした上で、投票、挙手などにより選出すること
・労働基準法第41条第2号に規定する管理監督者でないこと

詳細な条件は労働局のリーフレットを参考にして下さい。

36協定の届出方法

36協定の届出様式

36協定は労働基準監督署に届け出ますが、監督署が定めた様式に従って届けを作成します。
様式は合計で7種類あって、業種や協定の内容によって使用する様式が異なります。
自社ではどの様式が当てはまるのかを調べて、該当するものを正しく用いて届け出る必要があります。
厚生労働局 雇用・労働主要様式ダウンロード
・時間外労働・休日労働に関する協定届
・【新技術・新商品の研究開発業務(適用除外)】時間外労働・休日労働に関する協定届

36協定の提出

36協定を定められた様式で作成したら、労働基準監督署に提出します。提出方法には3種類あります。
・窓口提出
・郵送提出
・電子申請

36協定の上限を超えたらどうなる?

36協定違反は労働基準法第32条の「労働時間」、第35条の「休日」の規定に違反したことになり、第119条第1項の規定により使用者は6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金に科せられる可能性があります。
罰則の対象者は労働者ではなく使用者です。

36協定違反が発覚したら企業はどう対応する?

36協定は社内で事前に発覚した場合は適切に対応し、通報された場合は労働基準監督署の指示や勧告に従います。

社内で発覚した場合

36協定違反が社内で発覚した場合は、速やかに適切な措置をとる必要があります。
・36協定を締結していない場合は、36協定を締結し、労働基準監督署に届け出る。
・増員や業務効率化を図り、時間外労働を減らす。
・労働時間を適切に管理し、36協定違反を未然に防ぐ。

従業員に通報された場合

従業員に36協定違反を通報された場合は労働基準監督署による調査が行われ、指導や是正勧告の対象になります。
企業は指導や勧告に従って速やかに対応する必要があります。

36協定の上限を超えないための対策

36協定の上限を超えないために様々な対策をとる必要があります。代表的なものを下にあげていきます。

現状を把握し勤怠管理を適切に行う

残業時間を記録し、従業員の残業が過剰になる場合は早めに対策を講じます。
また、残業時間の制限を設け、従業員に過度な残業を防ぐようにします。

残業の理由の分析と対策

残業が発生する理由を分析し、問題の根本原因を特定します。
原因を解決する方法を考え、それを取り除いていきます。

あきらかに人が足りてない場合は、適切な人員配置と人材確保(採用)の必要があります。
業務負荷に応じて人員配置を調整し、オーバーワークを避けます。
人員配置だけで追いつかない場合は、新たに人材募集する必要があるでしょう。

長時間労働は無駄な仕事や作業効率が悪いことからも発生します。
生産性を向上させるために業務プロセスを見直し、無駄な作業や手続きを削減しましょう。
また、快適な職場環境と必要なツールを従業員に提供し、作業効率を向上させることもできます。
他にも、従業員のスキルアップをはかる研修などを実施することで生産性が向上します。

経営者と労働者双方の意識改革

日本では昔から残業が美徳とされるような会社が多いです
健康リスクへの配慮や、作業効率化の観点から必ずしも長時間働くことが美徳ではないという意識づけが必要です。

おわりに

36協定は2019年の法改正時に大きく変更があり、2024年には一部の猶予が受けられていた業種(建設業、病院など)にも適用されます。
これに伴い就業規則の変更をしないといけないケースも見受けられます。

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